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2023-12-01

原動力

エビハラカズミ/GlassEye Inc.

入社する一年前、学生最後の年がはじまると同時に起こったパンデミック。一時期、学校に通うことができなくなりました。途端に下宿していたワンルームが自分の世界のすべてになったようでした。(大袈裟かもしれないけれど)すべてのコミュニティから外され、社会と切り離されたように感じることもありました。
進路を選択する時期でもあり、このまま建築の道を進むことに自信が持てずにいました。進路を決めたあとも、間違っていないかなと進む道が分からなくなり、漠然とした将来の不安が積み重なる一方でした。

そんな時に、拠り所になっていた場所があります。以前お世話になっていたバイト先が閉業し、いてもたってもいられず、働かせてください…と飛びこんだ小さなパン屋さん。5人ほどのスタッフさんがパンやお菓子を焼いている隠れ家のようなお店です。ここでは、一人一人の性格や意志を尊重してくれて、次第に向いているお仕事を任せてもらうようになりました。役割を与えてもらったことでやりがいに繋がり、自分の存在意義を認識すると自然と次の目標が生まれてくるようになりました。

以前、所長との話しの中で「自分の立ち位置はまわりから伝わってくるもの」と教えてもらったことがあります。

それぞれの目標に向かって邁進できる仲間がいて、目の前に喜んでもらいたい人がいる。その時にはじめて自分の進む道が見えてくるような気がしています。心が折れそうになることも多々ありますが、支えてくれる人たちすべてがわたしの原動力です。
あの1年は今でも思い出す度心がきゅっと苦しくなりますが、自分自身と向き合う事のできた、必要な過程だったのかなと捉えています。大切にしたいもの、ひと、時間に気づくことができ今の生活や仕事に対する感覚にも繋がっています。

写真1枚目は今年竣工したギャラリー(蓮のうてな)、2枚目は雨の日の事務所の様子。外の風景が映り込み、空間の境界を曖昧にしています。天候や差し込む光の角度によって刻々と変わりゆく様子はずっと眺めていたいほど。季節をこえてお庭の成長を観察することも日々のたのしみのひとつです。

設計・生川

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