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2023-05-19

エイジングとメンテナンス

時の経過は「正しくつくられ、正しく使われたもの」に格を与えていく。

産まれたばかりの赤ちゃん、その初初しい肌は何とも愛おしいのだが、齢を重ねた老人の深く刻まれたシワにも尊敬と畏敬を感じる。

職人は技術を磨き時の経過を超越するものづくりを目指す。大工は木という素材が発する微かな声に耳を傾け、対話し、その素材がもつ力を最大限に引き出そうとする。この引き出そうとする行為から「引き算の美学」という概念が生じたのではないかと思う。何かを足していくのではなく、今ここにある一つ一つを見つめ大切にするということだ。一つ一つは一人一人にも繋がる。

「エイジング」は自然本来が持つ力であり、それを引き出すのは職人の技術と感性だ。一方「メンテナンス」は、心そのもののように思う。心とは何か?心はどこにあるのか?という問いがあるが、私は人とモノの間に心がある(宿る)と思っている。日本庭園は100年かけて完成させると言われている。2年も放置するとすっかりダメになってしまう松を中心に据える。その庭を維持していくこと、それは弛まない繁栄の証であり身代のバロメーターでもある。同時に庭に愛情が注がれ続けているかどうかという心のバロメーターでもある。

エイジングとメンテナンス、、、自然の持つ力、職人の技術と感性、心のあり様が一体となってモノは「美しい」に向かっていくのだろうと思っている。

写真は、竣工間際のプロジェクト。今はまだ初初しいヒノキが時とともにどのように成長していくのかとても楽しみだ。

次回からこのブログリレーは、新しいシリーズに入ります。まずは「せとうち大工・修行編」テーマは「志す」です。

設計・六車誠二

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