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2022-11-22

趣がある木製建具

先日11/8に皆既月食と同時に天王星食があった。
442年以来だそうで、計算すると西暦1580年(安土桃山時代)になる。
宇宙にある惑星の動きを見て、自らの時間と関連していることに感動したのと同時に、欠けていく綺麗な満月を見て、月は他の惑星との関係を知ることができる星だと改めて思った。

月といえば、お月見である。日本には、月を眺め、愛でる風習がある。
日本には古来より生活の中に自然を取り入れ、いかにうつろいを感じるのかといった文化があると思う。

例えば、栗林公園の掬月亭では、秋の夜にここから月を見ようと観月会が開かれている。木製建具を全て取り外せば、屋根と柱だけの空間となり、月を眺めることができる。日中であれば、庭園を見渡すこともできる。このように木製建具は、自然を感じようとする人々の思考の積み重ねの末に編み出されてきたのだと思える。

建具は、建築物の中と外にある自然の間に境界を設けるものである。
中でも木製建具は、板戸、蔀戸、格子戸、舞良戸、障子、襖など様々な型がある。素材としては、板、合板、紙、布、葦、網、ガラスなどといったものがあり、型や素材によって自然を受け入れる態度を緩やかに決めることができる。これは、現代のアルミやスチールなどの金属製建具にはない特徴である。金属製のガラス戸や窓は、あらゆる機能をまとめて、製品の性能を上げることに向かっていて、まとめることができない機能は除いていくこととなっている。ガラスのサッシと網戸だけである。除いた機能を補うためには、もし光を遮るためであれば、カーテンやブラインドを追加する。これでは、個々の製品がぶつかり合ってまとまりがなくなる。各製品の性能が良ければそれで良いという考えであり、調和は考えていない。

木製建具は、様々な型や素材を使ったものを場面を想定して複数具えることができる。そして、光、風、雨、視線、熱などの環境を前にして、自らの意思で受け入れる態度を表すことができる。
風雨を凌ぐために、板戸などで環境に区切りをつけたり、障子の和紙の厚みによって光の透過性を選んだりして、外と内の間に趣のある連続性が表現されることになる。
木製建具は、特に住む人の個性や趣味が表現される部分である。
気候風土と人間味が交わってできた味わい深いものだと思った。

設計・藤堂

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