toggle
2022-12-19

半径1時間の距離内で…

どうしてもアルミサッシュに対して積極的になれない。

建築をはじめた20代前半の頃、先輩にアルミサッシュの工場がどうして日本海沿いに集中しているか知っているか?と問われ、原料のボーキサイトは全て輸入に頼っており、それを精錬するには多量の電気を必要とし、日本海側は原子力発電所がたくさんあるからだと教えられた。どうしても積極的になれないのは、これがはじまりのように思う。

ちなみに、アルミは電気の缶詰という別名を持ち、その精錬は儲けにならないという理由から現在は、ほぼ外国からの輸入に依存している。

その後、尊敬する建築家の発する「建築のデザインは窓が出来たら半分!」という言葉に触発され、窓のあり方とそのディテールを黙々と探求した。それは今も続けている。既製品を使うなんて…と、強く長く思ってきた。

スタジオ・ジブリの宮崎駿監督の「半径3メートル以内に大切なものはぜんぶある」という言葉を噛み締めているうちに「衣・食・住」くらいは、半径1時間の距離内でどうにかしたいと強く思うようになった。プロダクション、カスタマイズ、メンテナンス…手の届く範囲で建築を作りたいと思う。このことは、ここ3年の世の動向の中でより強く思うに至っている。

実はガラスも単板が一番いいと思っている(使える範囲は激減させられてしまったが…)昨今流行の高気密・高断熱までは行かずとも中気密・中断熱くらいならどうにかなると思っている。この国の建築はいつの間にか性能合戦ばかりに明け暮れているが、建築は別の言い方をすれば、(はるか昔から)哲学の所産だと思っている。人がどう生きるかを問い続けることであると思っている。

写真は、はじめて手掛けた茶室「掌庵」、建築の空間性は窓で呼吸し展開する。

設計・六車誠二

次回からテーマは「メンテナンスとエイジング」となります。

関連記事

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です