toggle
2021-09-20

自然乾燥と太陽の香り

木は生物素材なので、その生命維持と成長において太陽のエネルギーと水の循環が必要だ。
太陽と水で二酸化炭素を吸収し固着化することで少しづつ成長し、その過程で酸素を放出する。

我々の営みに木を利用したいと思う時、成長した木から再び太陽エネルギーを借りてゆっくりとその水を抜いていく。この過程が「自然乾燥」。
この循環は、まさに「重農主義」。降り注ぐ陽光と水の循環が我々に無償で木材と酸素を供給し続けてくれる。つまりどんどん豊かになる。いにしえより続く人と木の交換原理だ。

化石燃料を燃して木を乾かせたのでは収支が合わない。もちろんエコでも何でもない。

今年は雨が多い。太陽がほとんど顔を出さない日が続く…さびしい。たまる洗濯物…しかたなく乾燥機に頼ることになる。もちろんエネルギー源は、ガス…化石燃料。あれ?いつもの香りがしない…それはおそらく太陽の香り。エネルギーが淀みなく流れ、循環した後に残る存在の見えない心のようなものだろうか?

写真は、「背割り」に「クサビ」を打込むシーン。同芯に円形を描く年輪、その閉曲線を開曲線にし、木の乾燥に伴う収縮の歪みを背割り部分で開放し、同時に表面積を25パーセント増やして芯からの乾燥を促すのが「背割り」。そこに「クサビ」を打込み、年輪の方向に圧縮力を加えて正方形の他の3面の割れを抑制する。この状態で安定したストックが可能になる。「自然乾燥は時間がかかるので人工乾燥しかない」というよく聞く話は、これで消えてなくなる。大半を占めるに至った人工乾燥に必要な化石燃料も不要になる。とうぜんエコである。

次回からテーマは「手刻み」に変わります。

設計・六車誠二

関連記事

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です