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2021-03-01

湿式一式請負

建築を構成する各素材がここまでことごとく石油由来のいわゆる新建材に取って代わった時代において「オーガニック・マテリアルをハンド・メイドで!」というスローガンを掲げ、自然素材+手仕事でモノづくりをしょうという行為には、明確な意志と社会に対する説明が必要なのかもしれない。

今や伝統的であることと世の慣習とはイコールではない。

「これが伝統なんだ!」という説明では通じない。

我々の方向は、今の慣習を変えようとすることと同じだ。

だから「新しいものの見方」が必要になる。

「発見」は、その視界が全体的で総合的であればある程、そこに手が届く可能性が高くなる。気付きや創意工夫の力がMaxになる。

「左官」にとってキーワードは「湿式一式請負」ではないかと思っている。これは原点回帰で、かつて左官は湿式一式請負が一般的業態で「土と左官」ならぬ「水と左官」

一式請負の反対が分業化…専門化(分業化)は、産業構造の最終形、生産性はおそらく最大だが、全体俯瞰がだんだん難しくなり、機械の歯車化の一歩手前、単一労働化・効率至上主義へと流れていく。今を生きる我々は、経験的にこの流れをよく知っている。そしておそらく今は、その最大渦中なのだろう。

職人による手仕事は、小規模・労働集約型において最大のパフォーマンスに達する。それは多様性を持つ緩やかな全体、「新しい…」が生成する場。「土」「木」「紙」「石」…漢字は頻度多く永く使われるほどに磨耗し一文字化するのかもしれない。漢字一文字で表される素材を使って、これまた一文字の「手」でモノをつくることに微かな自負を抱きつつ「新しい…」に少しでも近づいていきたい。

写真は、墨付けされた柱、「ヌ」とあるは、貫のスミ、その右の◯は間渡しのスミ、双方で土壁の下地である竹小舞の下地になる。

六車誠二

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