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2018-06-10

模型をしるべに

リアルな建築の直中に浸かりたくて、設計事務所への入所を希望したのがこの春。 文字通り右も左も分からないなか、事務所内で、お客様の前で、質問を発することができたとき、焦点が定まるのだと判った。 
ブログは質問では無いが、せっかくの機会に思うままを発したい。  
写真は建築の構造を確認する為の模型。設計段階で役立つように、図面を描いている間に立体にして確認する。軸組模型と呼ばれるこの模型をはじめに組み上げた。話し合いの傍らにあったり、図面を製作するのに頭が混乱するとデスクにある模型が助けになる。ある天気のいい昼時に外に持ち出して写真を撮り、パソコンの画面で模型を眺めてみた。するとまた、「ここはどんな高さで材料が繋がっていくんだ」、と疑問がわいてくる。  
建築の模型を見るのは好きだった。今現実に建てるための模型は見ている心持が違う。この場をお借りして私と模型の関係を明らかにする。  
小さい頃、建築の模型はブロックの出張りの数を合わせることだった。美術館で眺めて夢見るものだった。学生時代には暮らし方に頭を絞る手段だった。ついに仕事に就くにあたって今の日本で建築を作ることそのものに興味があった。本当にうれしいご縁で、設計事務所を訪ねた。現場へ来た印象が強く頭を占め、しばらくは建築模型を眺める気持ちを忘れた。   
四十年かけて育てた木を伐採する時に立ち会わせていただいた。先輩から仕事を引き継ぎ、お施主様とお会いした。今いる場所が最高だと感じる為に、毎日一歩踏み出しているか、というものづくりの秘訣を教えていただく。  
工務店と事務所のチームに迎えてもらい、木の乾燥から加工のことを聞くまでに真夜中を過ぎた。  
大事な材料を余さず使って、「今ここでできるいいもの」を作るためには、頭を整理しなければ情報が入らない。図面を描いて情報を整理していくなかでも、見落としがないかゴールを思い浮べてチェックできる方法。それが建築模型を眺める時間。 
茫然としているような時間が役立つのは意外だが、そんな時間もとって、質問をみつけてまた図面に向かう。この写真は梅雨前の一歩の記録。

設計・山田祥平

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